価値へ真っ直ぐに - お茶を広める湯呑み

価値へ真っ直ぐに - お茶を広める湯呑み

現代の暮らしに合わせ、日本茶を再定義するブランド「美濃加茂茶舗」の運営と商品の企画販売を行う茶淹(ちゃえん)。古くから続く“お茶を淹れる”文化をどんな形であれ絶やさない、と茶淹を立ち上げたのは代表の伊藤さんだ。

何かを形にして動ける自分へ

元々は企業向けにLED照明を販売する営業をしていた伊藤さん。
決してラクな仕事ではなく、ハードワークなファーストキャリアだった。
『実力主義の会社でしたが、元々体育会系ですし、むしろ厳しくとも頑張ったことが評価される方じゃないと嫌でしたね。』
どうせ仕事をするのであれば自分に実力をつけようと、意欲的にその仕事に取り組んだ。

ただ、どうしても「売る」ことが優先される仕事に疑問が抜けず、子どもが産まれたことなど環境の変化もあって、転職を決意。


そこで、たまたまお茶の仕事を認識した伊藤さんは、所謂「街のお茶屋さん」で働くことに。
『最初は正直、このお茶屋さんで1年くらい働きながら、次のキャリアを考えてみようかな、というくらいでした。』
しかし、店頭に立ってお客さん一人ひとりにお茶を売る中で、
『前職は営業成績のために売る、という色合いが強い仕事だったが、お茶屋さんでの仕事は売ったものが、ちゃんとお客様に満足してもらえる仕事。』と感じるようになった。


ただ、思い通りに進められないことにも直面した。家族経営の会社であること、そして顧客の9割は常連の方々という中で、オンラインストアなどの新たな試みは反対にあって進まなかった。

それでも、「お茶」のフィールドで自分が成せることを形にしようと前に進んだ。
『最初の会社はやりきる前に辞めてしまった。次に仕事を変えるとしても、今回飛び込んだ「お茶」というフィールドでは何かを形にしてからじゃないと、と思ったんです。』


「お茶」の価値、生産者の価値をもっと適正に

そうして立ち上げた「茶淹」。
自分が立ち上げてみて初めて見えた具体的なお茶の世界は、ネガティブなことも多かった。
市場全体の取引単価も下がり、自分が魅力的に感じた商品が安く取引されている状態。

『自分が好きなものの価値が下がっていく、というのは嫌でしたね。お茶ってもっと高いものだと。生産者が手で摘んで、急須で淹れて・・・。でも流通の中の商流で誰も儲かってない。歪な構造になっていて。』
お茶の価値が適正に伝わっていないことを感じた。

お店では、コーヒーには1杯500円でも払うが、お茶はそこまで払って貰えない。
『コーヒー屋さんでも、お茶を扱ってもらう。そんな状態をつくりたいんですよ。』

お茶は、生産者によって、使っている機械・製法が異なり、それによって味が変化する。現場ならではで生まれるエピソードがある。

『美味しいお茶の製法が、偶然の管理ミスで生まれたり。現場のストーリーを知れるのが、すごく面白い。』

現場に触れることでお茶の面白さに伊藤さんの素直な感情は動かされ、生産者に会うと『もっと価値づけできるのに。』という想いが強くなった。

 

変わっている、ルールとは違う。それでも周りが喜ぶことなら価値がある

生産者に会いに行くのも『純粋に興味があるから。』と語る伊藤さん。
『他のお茶と香りや味が違った時に、なぜ違うんだろうが気になって、生産者に会いに行っちゃうんです。それにより、生産者のお茶作りのストーリーを知ることができる。
生産者は1年に1回の収穫機会のために、畑に行って工夫したり、新しいことをやろうとしている。あまりにもピュアというか偏愛的なヒトに触れることが好きなんです。』

自分自身も枠にとらわれず、縁もゆかりも無い「お茶」という業界で、しかも起業の道を選択している。自分自身とお茶の生産者の『偏愛的』な部分を重ね合わせていた。

『これが正解だからこれやって、と言われることが苦手。小さな頃から「変わってるね」と言われることが多かったんですが、それが褒められてると感じる人間でした。』

そう語る伊藤さんは、幼少期から変わったことで多少怒られることでも周りが喜ぶことなら動く人間だった。
ルールや常識よりも、周りが喜ぶことに価値を感じる。それを「お茶」の世界で実現したい。
『あとに残ることって、すごい良いことかすごい悪いことしか残らない。みんなが良いって思うことを、そしてお茶の中で誰もやってことなったこと、やりたいですね。』
その想いで、コロナ禍と向き合って生まれた湯呑「CHAPTER」を生み出した。お茶の香りにスコープをあてた商品展開も考えている。

「お茶」の価値を高めることはもちろん、伊藤さん自身が何にも囚われず「良い」と感じることをまっすぐ進める意思が心地よく伝わった。

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