
吉川悠一さんと守孝太さんによって2022年に立ち上げられた風狂。
「日本の美的感覚を楽しむ」というコンセプトを体現するために、着実に歩みを進めている。
風狂のコンセプト、そしてそれを体現するためのモノづくりの土台には、共同創業者である2人それぞれの想いや価値観があった。
高い目標を掲げ挑戦を続ける
風狂は、守さんが吉川さんへ声をかけたことがきっかけとなり、創業された。
そして、その背景には、守さんが小学校から続けてきたサッカーでの経験があった。
「小学生の時から『将来サッカー選手になりたい』という夢を持っていたのですが、そのための努力を続けることができず叶いませんでした。目標がありながらそこに向かって努力し続けることができなかった自分に対して、強いコンプレックスや後悔を感じてました」それらを何らかの形で克服したいという想いから、自らより高い目標を求めて起業することを決めた。
「そこで、大学時代の友人だった吉川に声をかけてみました」
それは2020年、ちょうどコロナ禍での出来事だった。
昔から、そこにあった本質
守さんから声を掛けられた時、吉川さんは東京で働いていた。
「新卒で入社した外資系のホテルは、その国々の文化をうまく取り入れた事業運営をしているホテルでした。インバウンドの方々への接客を通じて、日本の文化を伝えることが自分たちの役割だと思っていました」
そんな吉川さんは、守さんに誘われた時に何を思ったのか。
「お金儲けのための起業なら、自分は乗らないと決めてました。話を聞くと、お金儲けよりも、どうせなら社会貢献につながることがしたいという意思が感じられたので、自分も一緒にやりたいなと思ったんです」そこから、そのために何をすべきなのかという議論が始まった。
「元々、自然の中にある美しいものを見たりするのが好きでした。それは『わび・さび』に象徴されるような”日本人が元々持っている美的感覚”だと思うんです。そして、日本人の美的感覚の中には、自然との関わり方の本質があると思っています」
日本特有の自然や文化と距離が生まれた今だからこそ、日本人の中にある美的感覚を探求し、多くの人が日本らしさについて考えるきっかけを作る。
それにより、社会を豊かにできるのではないかと考え、日本の美的感覚を伝えるモノづくりをすることに決めた。
自分たちの言葉で語れる人を増やす
風狂がモノづくりをする上で「独自に解釈したわび・さび」を軸とすることはブラさないという。
「今の時代のモノづくりに求められているのは、どちらかといえば完璧なものではないかと思います。風狂のモノは、曖昧で、手作り感があり、良い意味で粗さを感じられるようにしてます。それにより『わび・さび』が感じられるモノづくりを心がけています」風狂の最初の商品であるアロマキャンドルには、その要素が多く詰まっている。
「キャンドルの容器である信楽焼の陶器は、職人さんの手仕事で一つひとつ形作られています。陶器の波打つような形状は『わび・さび』の美的感覚の一部を表現しています。またキャンドルの香りや質感、減り方という変化でも『わび・さび』を表現したいと思い、製法にはこだわっています。使う人は気づかないかもしれないんですけどね」
コンセプトを体現することへのこだわりが良く伝わってきた。
そして、そこには吉川さんの想いがあった。「20歳の時にイギリスに留学したのですが、同世代の人が自国の文化に誇りを持って議論している姿を見ました。その時、自分はまだ日本のことを何も知らないなと思ったんです」
この原体験をきっかけに、吉川さんは茶道、華道、神道、和歌を学び、わび・さびに対する理解を深めたことが、今の風狂のコンセプトになっているのだ。
「日本の良さを、自分の言葉で語れる日本人がより増えると嬉しいです」
2人の想いが細部まで表現されている風狂のモノを通じて、日本人の中に眠っている美的感覚を感じてみてほしい。