愛知県半田市に本社があるオオサカヤは、1963年に呉服店から子供服を扱う小売業へ事業転換。ブランドの一つである「育児工房」は、”赤ちゃんのきもちいい”を大切にしたモノづくりを行っている。
社長の瀧本真さんへお話を伺う中で感じたのは、理想と合理性の両方を追い求めているということ。
”商人”としての正しさを追い求める瀧本さんの思想に触れることで、「育児工房」のこだわりを感じてみてほしい。
違和感に向き合う
オオサカヤは、瀧本さんの祖父が創業した。その後、祖母を経て母へと経営のバトンが渡っていった。
「母の時代に、子供服を扱う小売業を始めました。店が大きくなっていった時に、大手メーカーとの取引も始まったのですが、母は大手メーカーの商品に納得がいかなかったようです」
当時、生活環境とそれに伴う子育ての環境は、それまでとは着実に変わっていた。一方、大手メーカーが作る子供服は、全く変わっていない。そこに対して、当時の社長だった瀧本さんの母は、強い違和感を持ったという。
「母が素材を探している時に、吊天竺という素材を見つけました。『大手メーカーの商品よりも、肌触りが良くて気持ち良い吊天竺の方が、赤ちゃんも着ていて気持ちいいんじゃないか』という理由から、吊天竺を使った自社の商品開発を行うことになりました」育児工房のブランドを立ち上げている最中の1996年にオオサカヤへ入社した瀧本さんだったが、大学卒業後はテレビやラジオのアナウンサーとして活躍していた。
「元々、継ぐつもりはなかったんです。ただ、子供服の事業に育てられたという恩義があったので、頼まれた時に継ぐことを決めました」
お客さまの無駄を少なくする
「育児工房」のこだわりの一つは、無駄をなくすという考え方。
「足し算ではなく、引き算の考え方を大切にしてます。例えば、赤ちゃんに下着を2枚着せるのではなく、1枚着せれば良い下着を作っています。そうすれば、お客さまは2枚買わなくて良いので、お金の無駄がなくなりますよね。洗濯物の量も半分で済みますし。あとは、吊天竺を使って商品を軽くしているのも、毎日赤ちゃんを抱っこするときの親の身体的な負荷を少しでも軽減してあげたいという想いがあります」
メーカーが、無駄を省く時にまず考えるのは、自社のコスト削減のためというのが一般的だが、「育児工房」は”お客さまにとって無駄かどうか”も、大切な判断基準になっている。「中肌着とコンビ肌着の両方の機能を持った商品があります。これは、ボタンをはめかえるだけで、中肌着にもコンビ肌着にもなるので、着せ替えがいらない。これにより、着せ替えや洗濯の手間を省けると思います。」
「育児工房」の無駄を省くというモノづくりの思想は、商品の細部に宿っている。
子供たちの健やかな成長を願う
一方で、モノを作るという工程には、あえて時間をかけている。「扱っている素材の特性上、スピードをあげて作ると糸がぶれるんです。だから、ゆっくり作る。通常の10倍〜15倍の時間がかかっている工程もある。ゆっくりで良いので、止まらないことが大切なんです」
晒しと呼ばれる乾かす工程も、機械ではなく人の手で吊るして干しているという。機械ではないので、繊維が潰れないからふっくらした仕上がりになるという。
- 徹底して商品の気持ちよさにこだわる理由 -
「赤ちゃんの一番の仕事は、健やかに育つことだと思っています。お腹の中から出てきた赤ちゃんにとって、現実の世界というのはストレスが多い世界だと思うんです。だから、育児工房の商品は赤ちゃんのストレスを軽減してあげることで、健やかな成長を助けてあげたいんです」
商品の素材も、柔らかくて暖かいからという理由で、オーガニックな素材を使っている。
親の無駄をなくし、”赤ちゃんのきもちいい”、を追求するために、合理的な判断によるモノづくりをしているのが「育児工房」のこだわり。
商品に触れれば、そのこだわりを直感的に感じることができるだろう。