
加賀藩前田家の城下町として栄えた金沢市に工房を構えるORIGINAL FORM。
創業者である髙梨良子さんの作るガラスの器やグラスには、髙梨さんのガラスに対する愛着とモノづくりを通じて伝えたい想いが詰まっている。
思考され尽くしたデザインや形の中にあるその想いを伝えたい。
幼い頃から変わらないガラスへの愛着
髙梨さんは幼い頃、ガラス職人の仕事をテレビで見たことがきっかけで、ガラスに興味を持った。そしてその興味の強さは大人になっても変わらなかった。
「ガラスのグラスを作る工場で働くことも出来たのですが、いずれは作家としてやっていきたいと思いました。なので、芸術系の短大を卒業した後にお金を貯めて、東京ガラス工芸研究所という学校で専門的な知識を身につけました」
その後、徳島にあるガラスのカルチャースクールや富山ガラス工房で働きつつ、知識や技術を深めながら独立に向け準備を進めた。
「富山ガラス工房で3年間働いたあと、2007年に独立しました。最初から自分の窯を持つ人は少ないのですが、私はどうしても自分で溶かしたガラスでモノづくりがしたかったので、ローンを組んで窯を購入しました」
幼い頃、透明な溶けたガラスに魅せられたことがきっかけでガラスの道に進んだ髙梨さん。そのガラスへの愛着は、何年経っても変わっていなかった。
人への想いが生み出すオリジナリティ
そんな髙梨さんのモノづくりのこだわりは、”ユーザーの使いやすさ”と”髙梨さんのオリジナリティの表現”を両立すること。
「料理が盛られたりお酒が注がれた時の姿を意識して、デザインや形を考えて作っています。例えば日本酒用の酒器であれば、純米吟醸用のものと純米酒用で形を変えたり、中に入っている日本酒の色が分かるようしています」酒蔵の職人さんが細部までこだわりを持って作っているお酒を、味覚だけでなく目でも味わってほしい。髙梨さんのモノづくりには、そんなつくり手へのリスペクトの気持ちが込められている。
「食べ物や飲み物を邪魔しない器やグラスを作っています。ただし、それを前提にしながら、私らしいデザインや形をどう表現するか、にもこだわっています。グラスひとつひとつはもちろんですが、グラスをスタッキングした時にも、重なることで美しく見えるようデザインしてますね」ORIGINAL FORMという屋号には、”自分のオリジナリティを表現する”という意味に加え”形に責任を持つ”という意味も込められている。その言葉の裏にあるのは、使う人、そして料理や食材、飲み物などを作る人への想いなのだ。
手作りで伝える人の温かみ
昔から流行っているものを身につけることには興味がなく、”自分が作り出す”ことへの興味や関心が強かったという。そうした髙梨さんの根底にある原体験とは何か。
「小さい頃、よく祖母が着物の生地を使って袋やマスコットを作ってくれました。それを教えてもらい、自分で生地の組み合わせを考え作ったりしていたのですが、それが夢のようで楽しかったんですよね」
その経験がきっかけで、自らの手を使って作り出すこと、が好きになったという。
またそうした体験から生まれた商品もある。
「子供に使ってもらいたいと思い、落としても割れづらい形の箸置きを作りました。理由は、子供の頃から手作りのものに触れてもらいたいから。一つひとつ微妙に異なるモノとその手作り感から、人の感情や温もりを感じてほしい」幼少期に祖母と一緒に作った手作りのモノを通じて、祖母の温かみや優しさが髙梨さんに伝わっていたのではないかと思う。
髙梨さんが作る器やグラスは、とても繊細で美しい縞模様が施されている。その裏には、”底上げ”という技術的な配慮が示す通り、髙梨さんの人と器を思いやる温かみを感じた。