あるがままの自分 - 杉を活かした弁当箱

あるがままの自分 - 杉を活かした弁当箱

自然あふれる福岡県の糸島市で、『杉の木の素材の特徴を活かしたモノづくり』を行っている杉の木クラフト。家具や小物には一般的に使われていない”杉の木”を使い、お弁当箱やお皿などの製造と販売を行っている。

杉の木クラフトの創業者である溝口さんは、なぜ扱いづらいとされる”杉の木”を使ったモノづくりを今も続けているのか。溝口さんの人生が大いに反映された杉の木クラフトのモノづくりの原点を味わって欲しい。


日本の森をなんとかしたい     

幼い頃から自然が好きだった溝口さん。社会人になり東京の建築事務所に就職してからも、自然が多い田舎暮らしへの憧れを捨てられず、27歳の時に九州へ移住し、木工の仕事を始めた。

『日本の森の多くは戦後に植えられた人工林。だけどプラスチック製品が広まり、今は、ほぼ使われていないという問題を抱えている。』

その事に気づいたのが林業に興味をもったきっかけだった。

『使わないともったいない木の代表が杉の木。なので、杉の木を使うことで、植えられたのに使われていない、という日本の森林問題をなんとかしたいと思ったんです。』

そんな想いを胸に、杉の木を扱う木工の職人になることを決めた。

ただ、杉の木は、本来は家具や小物作りには向いていない。柔らかいし、木としてもありふれている。しかし日本の森林問題を何とかしたいという一心で、杉の木の特徴を活かしたモノづくりとは何なのかを考え続け、そして作り続ける中で、弁当箱にたどり着いた。

『杉の木は弁当箱に向いている。弁当箱は軽い方が良いし、ご飯を入れるので湿気を吸ったり吐いたりしてくれるのも良い。杉の木の良さを活かさずに無理をして製品を作っても、うまくいかないんですよ。』

言葉にすると当たり前に聞こえるが、弁当箱に辿り着くまでの道のりは決して簡単なものではなかったはず。

『弁当箱を買ってくれた方から、毎日の日課である弁当作りが楽しくなったという声をたくさん頂けました。』

溝口さんの”素材を活かすという事に対する強いこだわり”は、製品を通じて人々の日常生活の中の精神的な豊かさの創造にも繋がっている。

溝口さんが素材を活かすという事にこだわっている理由。そこには、木工職人としてのプライド、だけではなく、溝口さん自身が人生を通じて、学び得たこと、が根底にあった。


自分に嘘をついたり、我慢しても、良いことはない

『自分は一人の方が落ち着くんですよね。人間は生き物の1種なのだけど社会を作る。ただ小さい頃から、社会の中にいるのがきつかった。』

どちらかと言えば、人付き合い方が苦手な溝口さん。それも影響し、20代の頃は、仕事を辞め、引きこもりがちな時期もあった。

ただ当時、このままではダメだと考え、自分らしい生き方とは何かを考え続ける中で、自然と「モノづくり」が好きだ、という自分の原点に立ち戻り、九州の自然あふれる場所へ移住し、モノづくりを行うことを決めた。

『人付き合いが苦手な自分にとって、全く縁もゆかりもない場所への移住は、大きな決心だった。なので、移住を決意するために、自然豊かな場所でやりたいことを、毎日寝る前にスケッチして気分を高めていたんです。』

このアプローチも溝口さんらしい。得意かつ大好きな”スケッチ”という手段で、”本当に移住をしたい”と思える状態の自分になってから行動に移す。それができるのは、溝口さんが、自分に対して、嘘をついたり我慢をしたりしていないから。

『素材を活かしたモノづくり、とよく言うが、それは人にも同じことが言える。自分の個性や特性を活かして生きる方が良い。自分自身も、それができていなかった時は辛かった。』

人付き合いが苦手な事も、自然が好きでモノづくりが得意な事も、全て溝口さんの個性。それら全てを受け入れ、その中でどう生きるのかを考え、実践してきた結果、溝口さんの今がある。

あるがままの自分を生きる

『自分に嘘をついたり、我慢しながら生きても、うまくいかないことが多かった。』

杉の木の特性を活かしきる、というのが杉の木クラフトのモノづくりのこだわり。その根底には、モノも人も個性や特性を活かすべきである、という溝口さんの価値観がある。その価値観は、これまで溝口さんが”あるがままの自分”を生きてきた中で、培われてきたものだろう。

一覧に戻る