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カート

カートが空です

義理と人情<br> - 人の温かみを感じる靴下 -

戦前から繊維リサイクルによるモノづくりが盛んな愛知県の西三河エリア。その中の西尾市で、昭和37年から手袋や靴下、無縫製のニット小物の製造と販売を行う石川メリヤス。

自社で製品開発できる確かな技術力により、多品種小ロットのモノづくりにこだわってきた。同じものを大量に作って売る方が効率的であり、トレンドだったにも関わらず、石川メリヤスは、なぜ多品種小ロットにこだわっているのか。

使う人のためのモノづくり     

これが石川メリヤスが多品種小ロットの生産を行っている理由。例えば、企業向けの製品の一つに軍手がある。軍手を使う人たちが仕事をする場所や状況、そして内容も異なるため、軍手に求められる性能も異なる。

軍手を使う人のニーズに細かく対応することで、より効果的に使っていただくことはもちろん、結果的に長く愛用してもらえる。

”長く”や”持続的”、というキーワードが、3代目社長の大宮さんへのインタビュー中で何度も出てきた。これは決して、SDGsなどの現在のトレンドを意識して出てきた言葉ではない。

「西三河エリアが戦前から繊維リサイクルに力を入れていたことをもっと知ってほしいんです」

そのために、自社のHPでも発信を続けている。なぜ大宮さんは発信を続けるのか。

「本当に必要なことは昔からずっとやっている。それが今のトレンドの中で取り上げられ、そのトレンドと共に忘れられるのは悔しいんですよね」

繊維リサイクルにより作られる特紡糸という糸も石川メリヤスの製品に使われるものであり、それを紡績会社から仕入れている。自社が繊維リサイクルについて発信をすることで、少しでも仕入れ先企業の役に立てればという想いだ。

「最近2件の紡績会社が廃業した。なんの助けにもなれていないことに無力感を感じる」

「自社のことだけでなく、仕入れ先企業のことも考える」

これは、石川メリヤスが創業時から大切にしている想い。創業者である大宮さんの祖父は「仕入れ先を大切に」とよく言っていた。そのため、本当は内製化できるものをあえて発注したり、すぐには必要ない原材料を仕入れたりしたこともある。

自社の経営も苦しかったが、それは仕入れ先企業も同じ。だから相手が困っているのであれば、自社にできることをする。

「今の石川メリヤスがあるのは、仕入れ先企業が作った原材料を”使わせて頂いている”からなんです」

祖父の時代から大切にしてきた価値観は、こうした言葉使いにも表れている。石川メリヤスは、使う人のためのモノづくりという自社が目指すスタンス、と同じくらい、仕入れ先企業も大切にしてきた会社なのだ。

こうした石川メリヤスの価値観の根底にあるものは何なのか。

 

困っている人を助けたい

石川メリヤスの企業ロゴや商品ブランド名にもなっているサイコロ印。これを決めたのは創業者の祖父である。

サイコロ印は、時代劇ドラマなどで見られる半丁賭博のサイコロをイメージし採用された。半丁賭博は、創業の地である愛知県吉良町出身の義侠、吉良の仁吉をイメージしている。

この吉良の仁吉は、清水の次郎長の子分でもあり、幕末の時代を義理と人情で生きた人である。仁吉の義理と人情に共感した創業者もまた、義理と人情を重んじる人だった。 

「仕入れ先企業が困っていたら助ける」

これは、理屈や利害ではなく、創業時から受け継がれるDNAである”義理と人情”が成すことなのかもしれない。そして、このDNAは現社長でもある大宮さんの中にも明確に存在している。

- なくちゃ困るという製品を残すこと -

大宮さんが、どんなに経営が苦しくても大切にすると決めていること。

生産量がピークの5分の1になったが、製造を続けているラブヒールという靴下がある。合理的な経営判断だけを優先すれば、生産中止もあり得る。だが、少量でも製造を続けている理由は、直接、会社に問い合わせをしてまで製品の良さを伝えてくれ、そして買って使い続けてくれる個人のお客様がいるからだ。

「結局、私も父も義理や人情に弱いのかもしれません」

そう笑いながら話す大宮さんもまた義理や人情を大切にできる人だと感じた。

3代目経営者として、あらゆる葛藤の中で経営に向き合っている大宮さん。「自分は技術分野には明るくない。なので社員みんなで考え動ける組織にしていきたい」

今、大宮さんが目指している組織の姿。石川メリヤスが創業以来、大切にしてきた価値観やDNAは残しつつ、大宮さんらしさが加わることで、これまで以上に、”使う人のためのモノづくり”が加速していくだろう。

「駅まで迎えに行きますよ」

大宮さんと取材日程の調整をしていた際に、当たり前のようにおっしゃってくださった一言。誰に対しても、こうした気遣いが自然とできる大宮さんは、多くの人が応援したくなる経営者だと感じた。